マンション管理士制度が機能していると言う人はまずいません。そして実際に「いいマンション管理士」って本当に少ないです。それにはやはり構造的な理由があります。少し危険な説明ですが、実態に即して、誤解を恐れずに、分かりやすく実情の解明をしてみます。
マンション管理士制度が機能していない
2001年に誕生した「マンション管理士」という国が構想した制度。
・「プロであり商売であるマンション管理会社」
に対し
・「素人で輪番制のボランティアである管理組合」
の味方としてマンション管理の救世主となるべく誕生した「マンション管理士制度」。でも、これがうまく機能している、という人はまずいません。
これはなぜでしょうか?
そしてマンション管理士という存在は不要なのでしょうか?
簡潔に、でもちょっとだけ掘り下げてみたいと思います。
「マンション管理士」という資格の難易度
これは難しい資格となっています。毎年の試験の合格率は10%前後。合格率だけで難易度をはかれるものではまったくありませんが、相当に難しい試験になっています。
私がマンションに関係する会社に入って10年超。2つの会社を経験しましたが、非常に大雑把に「差別的に」分析しちゃいますと以下です。
・大学の偏差値60以上の出身者で真剣に勉強した人は合格している。
・偏差値50以下の大学出身者で合格している人を見たことがない。
・偏差値55程度の大学出身者の人が真面目に勉強して合格率が30%程度。
というようなイメージです。
論理的思考ができるかの分岐点
会社のなかのフロント部門で、社歴があってそれなりの立場で、立場上は絶対にマンション管理士をとっておかないとカッコ悪い人でも偏差値55以下の大学の出身者は合格できていません。
社内会議での発言や普段の仕事の仕方を見ていてもマンション管理士の資格を取得している人は論理的な思考ができています。一方で、マンション管理士の資格を取得しておくべき立場なのに合格できていない人の発言は「この人の発言はどうも感覚的だよなぁ」という印象です。この試験の合否でおよそ「論理的思考ができるかどうか」の境にもなる感じです。
すごく難しい資格ではまったくありません
一方、手前味噌ですが、私はマンションの仕事をする前に、49歳のときに通勤電車の乗車時間に過去問をやるだけで管理業務主任者とマンション管理士を同時に合格することができました。1週間違いで試験がありますので、なにも知らずに両方ました」(笑)。早慶出身者なら半年の期間の1日1時間程度の勉強でゼロから合格できると思います。
マンション管理士業でいくら稼げるか
一方、マンション管理士という仕事。どれだけ稼げるのでしょうか?
この仕事の基本はやはり理事会に出席して、理事長のみならず全理事の皆さんと、そしてなによりも管理会社のフロントマンとの会合の模様を確認することになります。そうしますと自ずとお客様の数に限界が生じてくるのはお分かりいただけると思います。
理事会はやはり土日に集中します。午前午後夜と一日3マンションに行ければいいのかもしれまんが、なかなかそんな自分のペースで会合を設定できるわけではありません。そうしますと土日に各一つの理事会。それを4週、ということでは顧客は8マンション。それに金曜日とかのマンションや土日にうまく午前・午後で入れられたとしても、一人のマンション管理士が理事会に出席してマンション管理運営に責任もってチェックできるのは15マンションくらいが限界となります。
理論上の最高値で800万円?
2か月に一回しか理事会のないマンションもあります。でもそれならそれでいただけるフィーも少ないことになります。2024年で各マンション管理士の相場を見てみますとおよそ7万円くらいが相場です。そうしますと7万円×15マンションで月商105万円。年商1060万円。これは総売上ですので、経費を差し引くと700万円~850万円程度でしょうか。
年収400万円以上は19%
マンション管理士業を立上げて、すごくうまく行って、全土日に理事会が入るようになって平日の夜も週に2回くらいの理事会が入るという超売れっ子マンション管理士になってこの程度の収入です。
開業時に最初からお客様のメドが見える仕事ではないですよね。
開業時は5万円の契約が一つ二つからはじめるしかないのがこの仕事ではないでしょうか。実際にマンション管理士の実態を調査した「公益財団法人マンション管理センター」の調査でも「マンション管理士を本業として活動を行っている者」でも年収400万円以上になっている方は18.8%しかいません。これでは誰もマンション管理士で食べていこうとは思いませんよね。
優秀な人間に見合う収入が確保できない。。。。
この資格はそれなりに難しい資格です。乱暴に言うなら偏差値55以上の大学を出た人しか合格していない。でも、それなりに優秀な方たちは、平均年収以上の仕事をすでに手にしている。
一方、マンション管理士という仕事は、すごくうまく行って顧客を目いっぱい獲得できても年収700万円とか800万円とか。開業したときにこの仕事が軌道に乗ることが見えている人はまずいない。同時に、前述のように一人のマンション管理士が多くのお客様(マンション)と契約できる仕事ではない。出席できる理事会の数には自ずと限界がある。自分が出られる平日の昼は理事会をやっていない。そうすると年収2000万円とかになれる仕事ではない。
そうすると、資格は持っていてもマンション管理士として開業しよう、という人はなかなか生まれてこないのは必然ですよね。いま就いている仕事を継続した方がいい、という合格者が大半です。
マンション管理士を開業している人って?
ですので、現実として、マンション管理士として開業している人の実態は、大きく分けて以下の2分類となります。
①副業マンション管理士
「マンション管理士事務所」と言いつつ、お願いしようとして良く調べてみると、行政書士、建築士事務所、税理士、とかの皆さんが副業として「資格取ったから」みたいな状態になっています。
こうした資格を取得している人たちが仕事の勉強の一つとして、また自分の本業だけでは収入が厳しいので、仕事の幅を拡げるために資格を取得した、というケースが大変多くなっています。マンション管理組合に精通しているわけではない、という方が大半です。
②脱サラマンション管理士
会社組織のなかで働くことが自分に向いていない、という方が「脱サラ」する手段として新しい、まだ開拓余地のあると思われた「士業」としてマンション管理士に挑戦している、という事例が数多く見られます。「なんらかの事情でマンション管理士という未開の仕事に挑戦した方々」です。
マンション管理士制度が機能しない構造的な理由
マンション管理士という制度が機能していません。
その理由をまとめてしまいますと、
- マンション管理士試験は難しく、優秀な方しか合格できていない。
- でも、この試験に合格する優秀な人は、すでに他の仕事で十分な収入が確保できる人たちである
- 一方で、マンション管理士という仕事は、効率化ができるというものではなく、一人のマンション管理士が受諾できる仕事量に自ずと限界があり、収入もどんなにがんばっても限界がある。
- だから、この資格を副業として活用している人ばかりが開業している状態となっている。
- 副業で開業している方々はマンションの管理の実態に精通してなく、結果としてそういう方々の仕事がマンション管理士という資格の評判を下げている。
制度はできたものの、悪循環をしてしまっていて、期待された機能を発揮できていないのがこの制度となってしまっています。
では、この制度は本当に機能しないままなのか。
この問題については、他稿で論じてみたいと思います。
